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お知らせ・コラム

ライフステージと法的制度(その1)

2023.12.01

コラム

ライフステージと法的制度(その1)

現在、日本は65歳以上の人口比率が21%を超える超高齢社会であり、2035年にはその比率は30%を超えると推計されています。また、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳で、この50年で10年以上延びました。他方、2019年の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は男性72.68歳、女性75.38歳となっており、平均寿命との差は約10年あります。

今回は、超高齢社会における日本において、ライフステージに応じて備える法的制度をご紹介します。

 

〇 ライフステージと法的制度

この図は、左から右に向かって時間の経過を示したものです。判断能力が十分ある状態から始まり、判断能力の低下、相続の発生、さらにその先の世代への承継へと流れていきます。そして、それぞれの時間軸において利用対象となる法的制度を示しています。

 

〇 財産管理契約

財産管理契約は、ご自身の財産の管理を第三者に委託する契約です。「第三者」はご家族でも結構ですし、弁護士などの専門家に依頼することもできます。心身ともに健康な場合のほか、判断能力はあるものの、病気や事故で身体的機能が低下してきた場合などにも利用できます。典型的には、通帳を預け、入出金を代わりに行ってもらうという事務が挙げられます。

 

〇 法定後見制度

いわゆる「後見」と呼ばれている制度です。認知症や障害のために判断能力 が低下している方に対し、家庭裁判所が選任する後見人等が、財産管理や身上保護に関して支援をする制度です。

法定後見には、ご本人の判断能力の程度に応じて、さらに3つの類型があります。判断能力の低下が大きい順に「後見」、「保佐」、「補助」があり、それぞれの支援者を「成年後見人」(単に後見人と呼ばれることが多いです)、「保佐人」、「補助人」といいます。

法定後見制度は、今回ご紹介する制度のうち、唯一事後的に利用する制度です。

 

〇 任意後見契約

任意後見制度は、任意後見を依頼する「委任者」と、将来後見人になることを引き受ける「任意後見受任者」(将来の「任意後見人」)との間で任意後見契約を締結するものです。

法定後見との違いは、将来の後見人を予め選ぶことができるという点です。法定後見の場合、後見人の選任は裁判所の専権事項となっているため、自由に後見人を選ぶことはできません。これに対し、任意後見では、ご本人(委任者)に判断能力があるうちに将来の後見人を決めておくことが可能です。

任意後見契約は判断能力がある間に締結しますが、実際に任意後見人が事務を開始するのは、ご本人の判断能力が低下し、かつ、家庭裁判所の手続きを取ってからとなります。

 

〇 死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、生前のうちに、第三者に対して、亡くなった後の諸手続に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約です。対象となるのは、葬儀・埋葬、病院・施設への料金の精算、ライフラインの精算と解約手続き、各種行政手続きなどで、依頼したい事務を選択して契約をします。亡くなった後に必要な手続きを取ってくれる親族がいない場合などに利用されています。

 

今回は、財産管理契約、法定後見制度、任意後見契約、死後事務委任契約を紹介しました。遺言と民事信託については、次回紹介します

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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