後見の終了と引継ぎ
後見は、ご本人が能力を回復したり、お亡くなりになると終了します。後見が終了すると、後見人は、後見終了後の事務を行い、相続人に財産を引き継ぎます。
今回は、後見終了とその後の引継ぎについてご説明いたします。
〇 終了直後の事務
後見の終了原因の多くはご本人の死亡です。
ご本人がお亡くなりになると、まず、ご遺体の安置やご葬儀をどうするかという問題が生じます。親族が後見人である場合は、引き続き、ご親族としての立場で葬儀等に関与されることが多いかと思います。これに対し、専門職が後見人である場合は、ご本人に身寄りがなかったり、親族と疎遠になっていることが多く、その対応を専門職後見人に求められることも少なくありません。そのような場合、後見人は、相続人の意思に反することが明らかなときを除き、裁判所から火葬の許可を得て火葬を執り行うことがあります。このとき、後見人が葬儀をも施行することができるかが問題となりますが、葬儀は、宗派、規模等によって様々な形態が考えられることから、葬儀の施行については消極的な考えが取られています。
〇 未払い費用の支払い等
ご本人が病院や施設でお亡くなりになられた場合、入院費等が発生しているのが通常です。ご本人が亡くなると後見は終了し、後見人の財産管理権や代理権は消滅しますので、後見人には支払い権限がないのが原則であり、これらの費用は、相続人において支払われるのが本来の姿です。しかし、病院や施設が後見人に対し未払い費用の支払いを求めてくることもありますし、未払いの状態が続いてしまうと遅延損害金が発生してしまうことにもなりますので、後見人は、相続人の意思に反することが明らかなときを除き、入院・治療費や施設利用料、電気・ガス・光熱費、賃料等について支払いをすることができるとされています。
〇 相続人の調査及び財産の引継ぎ等
相続人への財産の引継ぎのため、後見人は、ご本人が亡くなった後、相続人の戸籍謄本を請求することができます。相続人調査は速やかに行い、相続人の存在と所在を把握して連絡を取れる状態にします。
後見人は、任務終了から2か月以内に、管理の計算、つまり、後見人が管理していた財産について、後見開始から終了までの収支の一切を計算し、相続人に対し、その間の財産の変動と現状を明らかにします。また、裁判所にも後見事務終了等の報告をします。
管理していた財産については、相続人に対し引継ぎをします。相続人全員と連絡が取れ、相続人代表の方に引継ぎをできれば一番ですから、後見人は、連絡先の把握できる相続人全員に連絡を入れることが多いと思われます。もっとも、裁判所は、相続人の1人に相続財産を引き渡せば後見人としての義務は果たされるとの考えを取っていますので、ご本人と近しかった一部の相続人と連絡を取り、財産が引き継がれる場合もあるかもしれません。
相続人がいない場合には、相続財産清算人を選任し、残った財産を国庫に帰属させることもあります。
このような形で、後見終了後の事務が執り行われます。
執筆者プロフィール
弁護士 杉山 苑子