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お知らせ・コラム

後見人の職務と監督

2023.06.01

コラム

後見人の職務と監督

成年後見制度を利用し、後見人が選任されると、ご本人の財産管理や身の回りの契約は後見人が行うことになります。

今回は、後見人の職務と後見人に対する監督状況についてご紹介します。

〇 財産管理

後見人の中心的な職務は財産管理です。具体的には、ご本人の預貯金通帳を預かり、生活費・医療費の支払いや障害年金の受け取りなど収支の管理を行います。ご本人が賃貸物件を持っている場合は、賃料の受け取りや、未払いの賃料の回収などを行いますし、自宅で生活されていたご本人が施設に移られる場合には、将来の生活費を確保するために自宅を売却することもあります。ご本人が不利な契約を結ばされてしまったような場合には、その契約を取り消すことも可能です。

管理の方針としては、ご本人の財産を保全することが重視されます。そのため、後見人が、投資や借入れといったご本人の財産が減少する可能性のある行為をすることは難しいといわれています。また、一般にはご本人以外の第三者への金銭贈与も困難ですが、配偶者やお子様に対する生活費の支払いは可能ですし、それまでの生活状況や収支などを勘案して、両親への生活費の支払いや孫の学費支援などが認められることもあります。

〇 身上(しんじょう)保護

財産管理に並ぶ後見人の職務として、身上保護事務があります。耳慣れない言葉かと思いますが、ご本人の生活の保持や介護に関わる契約行為等を行う事務と考えてください。具体的には、施設の入退所、障害福祉サービスの契約、医療契約の締結及びこれらの履行状況の確認などが挙げられます。

どのような場所で暮らすか、どのようなサービスを受けるかは、ご本人の意向に加え、ご家族、病院・施設、ケアマネなどの支援者の意見等も伺いながら決定し、ご本人が安心して生活できる環境を整えていきます。

〇 後見人に対する監督体制

後見人は、上記のとおり、広範な権限を有しています。そのため、後見人による不祥事を心配される方もいらっしゃると思います。しかし、後見人に対する監督体制は年々整備されています。

まず、後見人は家庭裁判所から監督を受けており、後見事務について、定期的に裁判所へ報告しなければなりません。通常は年1回定期報告を行い、財産の管理状況や後見事務の内容について家裁による確認が行われます。また、定期報告以外にも、自宅を売却する等の重要な行為をする場合には、事前に裁判所に相談をしたり、許可を得なければならないこともあります。

このほか、後見人による不祥事対策として、後見制度支援信託(預貯金)が導入されています。後見制度支援信託(預貯金)は、本人に一定額以上の資産がある場合に、日常生活で通常使用しない金銭を信託銀行等に預けてしまい、家庭裁判所の関与のもとで財産管理を行う制度です。名古屋家裁では、後見人が親族であり、かつ、ご本人に一定の資産がある場合に、この制度の利用の検討を求められます。現在のところ、弁護士などの専門職が後見人の場合には適用はありませんが、専門職が横領等の不祥事を起こした場合には、専門職団体において一定の見舞金を支給する制度を設けていることがあります。弁護士に関しては、弁護士成年後見人信用保証制度という制度があり、信用保証に加入している弁護士が後見業務で横領行為を行った場合には、上限3000万円が支払われる仕組みがあります。

このように、後見制度は、他の制度と比較して、ご本人の財産保全という観点からは相当強力な対応策を講じている制度といえます。

 

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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