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お知らせ・コラム

遺言の種類

2024.04.01

コラム

遺言の種類

ご自身の財産の残し方を予め決めておく手段として遺言があります。遺言にはいくつかの作り方がありますが、よく利用されているのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。いずれも遺言の効果に違いはありませんが、手続き、安全性、費用といった点に違いがあります。今回は、両者の特徴や違いをご紹介します。

 

〇 公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言のことです。

公証人は、法務大臣から任命された公務員であり、元裁判官や元検察官などの法律の専門家です。この公証人が執務している場所が公証役場であり、愛知県内には11か所あります。遺言を作成する場合、原則として公証役場に足を運ぶことになりますが、公証人にご自宅や病院、施設などに出張してもらうこともできます。

誰にどの財産をどれだけ残すのかといった内容は、作成する方自身が決定します。公証人は、ご本人の希望に沿った遺言内容を法律的に有効な文章で作成してくれます。そもそもどのような分け方をすべきか判断に迷う場合は、弁護士等の専門家への相談も検討されるとよいでしょう。

遺言は、公証人の面前で、証人2名の立ち会いの下、作成します。遺言を作成する方は、遺言の内容を公証人に口頭で説明します。このとき公証人は、遺言を残される方に判断能力が備わっているか、どのような遺言を遺されることを希望されているのかを確認します。作成者の判断能力が減退しているなどして十分に説明することができないような場合、公証人が公正証書の作成を断ることもあります。このように、公正証書遺言を作成するということは公証人による面前でのチェックが入るということですので、公正証書遺言は、遺言の中で最も安全な作成方法といえます。また、作成した遺言の原本は公証役場に保管されるので、紛失のおそれはなく、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりするおそれはありません。

自筆証書遺言の場合、相続が発生すると、原則として家庭裁判所で検認という遺言書の形状や内容を確認する手続きが必要となります。これに対し、公正証書遺言の場合、検認手続きは不要ですので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することが可能です。

公正証書を作成する場合は、公証人に支払う費用が必要です。財産規模によって費用は変わりますが、数万から10数万円程度かかることが一般的です。

 

〇 自筆証書遺言 

自筆証書遺言は、文字通り、自筆で作成する遺言です。法律上、厳格な方式が定められており、原則として全文・日付・氏名を自署し、押印して作成する必要があります。

もっとも、近時の法改正で、自筆証書遺言は作成の負担が軽減されています。以前は、すべての文章を自筆で記載する必要がありましたので、対象財産を個別に遺言に載せようとすると、財産の種類や数が多い場合には何枚にもわたり手書きで書き連ねる必要がありました。遺言は、訂正する方法も厳格に定められているため、書き損じがあると事実上書き直しをしなければならなくなり、特にご高齢の方が長文の遺言を作成しようとすると、かなりの労力が必要でした。これが、法改正により、遺産や遺贈の対象となる財産の目録(財産目録)を添付する場合には、その目録については自書を要しないこととなりました。財産に関する記載は、パソコンで作成した財産目録や、通帳のコピーなどで代替することが可能となっています。

さらに、令和2年7月10日から、法務局で自筆証書遺言の保管制度が創設され、作成した自筆証書遺言を法務局に預けることができるようになりました。法務局に預けるメリットは、自筆証書遺言の紛失や改ざんが防止されるという点にあります。また、自筆証書遺言の場合、前述のとおり、相続が発生すると家庭裁判所で検認という手続きを取る必要があるのですが、この保管制度を利用すると検認は不要となります。遺言書保管の申請手数料は1件につき3900円ですから、公正証書遺言の作成と比べると安価で利用ができます。

 

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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