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数字でみる民事信託(その2)

2022.10.01

コラム

数字でみる民事信託(その2)

9月3日、名古屋で開催された日本弁護士連合会主催のシンポジウムで、民事信託と後見制度に関する分科会報告が行われました。

今回は、分科会の資料として配布された民事信託に関するアンケート結果をご紹介します。
アンケート結果から民事信託の実像が浮かび上がってきます。

〇 民事信託の作成年齢・利用動機

アンケートによると、民事信託を利用する委託者の年齢層は、70代が約4割80代以上が約4割でした。
つまり、70代以上の利用が8割超ということになります。
ご自身で財産を管理できるうちは自分で管理し、不安を感じる年齢になってきたときに信託の利用を検討されるケースが多いようです。遺言と同じように、ご自身の財産を誰に引き継いでいくかを決めておきたいという理由で信託を選択したケースも多くありました。

また、数は少ないものの、障がいを持つお子様のために信託を設定したというケースも報告されています。財産を託した親(委託者)が亡くなった後も、受託者において、お子様(第二次受益者)のために適切に財産管理が行われることを企図した信託です。

このような信託は、いわゆる「親亡き後」への対応として期待が寄せられていますが、世代を超えて信託が継続することから、数十年にわたって財産を管理してくれる受託者を見つけなければならないという点が課題となっています。ご親族に受託者をお願いすることが難しい場合には、以前のコラム(「福祉型の信託商品」)でご紹介したような信託商品の活用も検討されるとよいでしょう。

〇 信託の規模

どのくらいの財産を受託者に預けるのか、という信託財産の規模に関しては、3000万~1億円が約4割で最も多くなっています。管理を委ねる財産には不動産が含まれていることが多く、賃貸アパートなどの収益物件が含まれているケースも約2割あることから、一定規模の財産について管理が必要なケースで民事信託が利用されているといえます。特に新たな借り入れが必要となる場合には、既存の後見制度では見通しが立てづらい面があるため、信託を選択されるケースが多いと思われます。

他方で、信託財産が3000万円未満のケースも3割弱に上っています。
信託は、後見とは異なり、託す財産を選択することができるという特徴があります。そのため、将来、ご自身が認知症などになって自宅を売却できなくなることを避けるために、あらかじめ、自宅とその売却に必要な資金をご家族(受託者)に託し、自宅を売却したら信託も終了させるといった、一時的な利用目的での信託も活用されていることが窺われます。

〇 信託利用中の費用

信託を設定しても、受託者によって適切に運用されないと委託者の思いを実現することができません。
本来、信託から利益を受ける受益者が受託者の業務に目を光らせることが予定されているのですが、民事信託の場合、ご高齢の方や障がいをお持ちの方が受益者となることが多いことから、十分な監督を期待するのは難しい面があります。そこで、民事信託では、受託者の事務を監督する「信託監督人」を選任するケースが増えています。信託監督人にはご家族がなることもできますし、弁護士などの専門家がなることも可能です。アンケートでは、ご家族と専門家の割合がちょうど半々という結果でした。

信託監督人には報酬が発生することがありますが、費用は月0円~5000円が約6割、またはタイムチャージ制で1時間あたり5001円~1万円が約2割という結果でした。このアンケートには、ご家族が信託監督人になる場合も含まれているため、専門家にかかる費用のみを反映したものではありませんが、後見制度を利用した場合の後見監督人と比べると、比較的安価ではないかと思います。

 

ご紹介したアンケート結果は日弁連のホームページから入手できます。

関心のある方はご覧いただけたらと思います。 (https://www.nichibenren.or.jp/document/symposium/gyoukaku_sympo.html 第6分科会「民事信託と後見制度」資料3)。

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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