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お知らせ・コラム

民事信託って何?

2020.12.22

コラム

民事信託って何?

民事信託(あるいは家族信託)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?耳慣れない言葉ですが、ここ数年、新聞や雑誌などで取り上げられる機会が急速に増えています。

これまで信託といえば、投資信託に代表されるように、投資家から集めたお金を大きな資金としてまとめ、運用の専門家が投資・運用するという、いわばプロによる資産運用の手段として知られていました。

これに対し、民事信託は、家族による財産管理・財産承継のための制度であり、信頼できる家族などに自分の財産を託し、その家族において預かった財産を管理し、次世代以降に承継させることを目的とします。高齢者の特殊詐欺・認知症予防対策として、また、障がいのあるお子様がいる家庭において、親亡き後の課題を解決する手段としても注目されています。

具体例を見てみましょう

相談者である父親(70歳)には、重度の障がいのある長女(45歳)がおり、施設で生活しています。他に子供はおらず、母親は他界しています。

父親は長女が将来生活に困らないよう、無駄遣いをせず財産を貯蓄してきました。しかし、年齢を重ねるにつれて徐々に体力が衰えてきており、自分が認知症になって施設に入らなければなくなったときや、自分の死後の長女の生活について心配しています。

父親には、信頼できる姪(35歳)がおり、今後は姪に対し、一定のまとまった金銭の管理を依頼し、また、自分が死亡した後には、長女のために財産を使用して欲しいと考えています。そして、最終的に長女が亡くなったときには、残った財産を長女がお世話になった施設に渡したいと考えています。

このようなケースで民事信託を利用することが考えられます。

具体的には、父親と姪との間で信託契約という契約を結びます。これは、父親が持っている金銭の一部の管理を今後は姪に委ねることを内容とするもので、その際、財産を託された姪が、契約後、誰のために財産を管理するのか、あるいは、最終的な残余財産を誰に交付するのかについて取り決めをしておきます。そうすることで、父親の生前は父親のために財産管理(例えば、預かった金銭の中から父親に生活費を給付する)を行い、父親の死亡後は長女のために財産管理を行うことや、長女の死亡後、残った財産を施設に交付することが可能となります。

信託の特徴

信託の特徴の1つに、「誰のために財産管理を行うのか」、あるいは、「最終的な残余財産を誰に交付するのか」を柔軟に取り決められるという点があげられます。信託契約で託された財産のことを信託財産といいますが、この事例では、信託財産から給付を受けることができるのは、当初は父親であり、父親の死後は長女であり、最終的には施設となります。

同じ効果を信託以外の制度で実現するのは難しいです。例えば、父親が遺言を作成する場合、長女に全財産を相続させることはできますが(この事例では長女以外に父親の相続人はいないので、遺言を作成してもしなくても効果は同じです)、さらに進んで、長女が亡くなった場合の財産の帰属先を決めることはできないとされています(このような遺言を後継ぎ遺贈といいます)。そのため、長女が結婚したり子どもをもうけるなどして相続人がいる場合はよいのですが、そうでない場合には、長女が遺言などで財産の承継先を定めない限り、長女が死亡した時点で残った財産については、国庫に帰属することになります。これを避けたいならば、民事信託の活用が検討されます。

このように、民事信託は、財産を託した本人の生前、死後を通じた財産管理を可能とすると共に、次世代、次々世代の財産承継も実現できるという特徴を備えた制度といえます。

 

毎月、親亡きあと、親の支援なきあとのコラムについて更新しています。
来月は障害年金に関するコラムを掲載予定です。

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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