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後見制度が変わる?改正の動き

2024.08.01

コラム

後見制度が変わる?改正の動き

成年後見制度が大きく変わろうとしています。後見法改正に向けた議論が進んでおり、数年後には法改正が行われる見込みです。今回は、後見制度の改正に向けて、これまでの実情とそれに対する課題についてご紹介します。

〇 後見制度改正に向けた動き

成年後見制度は、平成11年に従来の禁治産及び準禁治産の制度を改正して設けられた制度です。自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション等の現代的な理念と従来の本人の保護の理念との調和を図りながら、できる限り利用しやすい制度を実現することを目指して導入されました。

しかし、制度利用が進むにつれ、様々な課題も指摘されるようになりました。平成28年に成年後見制度の利用の促進に関する法律が施行されると、同制度の利用促進に向けた課題や運用等について様々な検討が行われてきましたが、令和4年3月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画において、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うものとされ、これを受けて現行の制度の問題点と今後の制度の在り方を検討することを対象として「成年後見制度の在り方に関する研究会」が設置されました。令和6年2月に同研究会の報告が取りまとめられ、同年4月より、法制審議会での議論が始まっています。

〇 成年後見制度の利用状況 

令和5年12月末日時点における成年後見制度(成年後見、保佐、補助及 び任意後見)の利用者数は、合計24万9484人であり、利用者数は年々増えています。また、昨年1年間に新たに申し立てられた成年後見関係事件は4万951件であり、新規の申立も増えています。

成年後見制度を利用するためには家庭裁判所への申立てが必要なのですが、誰が申立人かというと、最も多いのは親族ではなく市区町村長(約23.6%)となっており、近時は市区町村が申し立てるケースが増えました。申立人第2位は本人(約22.2%)、第3位が本人の子(約20.0%)という状況です。

誰が成年後見人等に選任されているかというと、配偶者や子などの親族が約18.1%となっており、親族以外が成年後見人等に選任されたものは全体の約81.9%ですから、圧倒的に親族以外の人が後見人等に選任されているというのが実情です。

〇 現行制度の課題 

このような実情を踏まえ、指摘されている問題点は次のような点です。

①  制度利用の動機となった課題が解決し、本人やその家族において、家族による支援やその他の支援によって制度利用の必要がなくなったと考える場合でも、判断能力が回復しない限り制度の利用が継続すること。

②  本人にとって必要な限度を超えて、本人の行為能力が制限される場合があること。本人の自己決定の尊重を更に重視する観点からすると、成年後見制度の取消権(その前提としての同意権)や代理権が広すぎること。

③  成年後見人等による代理権や財産管理権の行使が、本人の意思に反し、又は、本人の意思を無視して行われることで、本人の自律や自己決定に基づく権利行使が制約される場合があること。

④  本人の制度利用のニーズの変化に応じた成年後見人等(特に専門職後見人)の交代が実現せず、本人のニーズに合った保護を十分に受けることができないこと。

こうした課題に対しては、本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべきではないか(必要性・補充性の考慮)、三類型(後見・保佐・補助)を一元化すべきではないか、終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべきではないかといった指摘がなされており、議論が進められているところです。

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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