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お知らせ・コラム

信託監督人と受益者代理人

2022.08.01

コラム

信託監督人と受益者代理人

民事信託は、信頼する家族に財産管理を委ねる制度です。
後見とは異なり、裁判所が関与することはほとんどありません。
このことは、財産を託す人の思いを尊重した柔軟な財産管理が期待できる一方で、監督不在による濫用の危険と隣り合わせともいえます。

民事信託では、信託の濫用防止のために監督人を選任することができます。それが、今回ご紹介する「信託監督人」と「受益者代理人」です。

 

〇 民事信託と信託監督人・受益者代理人

民事信託は、ご自身で財産管理をすることを負担に感じている高齢者や、ご自身で財産管理が困難な障がい者のために利用されることが一般的です。

本来、信託は、信託財産から利益を受ける受益者が、財産管理を行う受託者を監督することが想定されているのですが、民事信託の場合、受益者となる人が高齢者であったり、障がい者であったりすると、受益者自身が受託者を十分に監督できないことがあります。そこで、受託者に対する実効的な監督を行うために、信託監督人、あるいは、受益者代理人の選任が検討されるのです。

 

〇 信託監督人と受益者代理人

信託監督人や受益者代理人は、いずれも信託契約書の中で指名することが一般的です。

つまり、財産を託す委託者自身が、受託者を監督する人(信託監督人や受益者代理人)を選ぶことができます。ここは、成年後見における成年後見監督人と異なる点です。

では、信託監督人と受益者代理人の違いはどこにあるのでしょうか。

民事信託は、財産管理だけでなく財産承継機能を持った制度です。

例えば、Aさんが財産を信託した場合、Aさんが存命の間は、信託財産から得られる利益はAさんが取得し(当初受益者)、Aさんが亡くなった場合には、残った信託財産から得られる利益をBさんが取得する(第二次受益者)、というように、信託から利益を受ける人を移転していくことができます。

信託監督人は、Aさん、Bさんなどすべての受益者のために受託者を監督する役割を持っています。これに対し、受益者代理人は、特定の受益者、例えばAさんのために権限行使をする役割を持った人です。言い換えると、信託監督人は信託全体のために受託者を監督する人であり、受益者代理人は特定の受益者のために受託者を監督する人ということです。

また、信託監督人は、受託者に対して信託事務内容の報告を求めたり、一定の資料の閲覧を請求することができますが、受益者代理人は、これらの権利に加え、受益者の代理人として、例えば、受託者に対して生活費の給付を求めることもできると言われています。つまり、受益者代理人は信託監督人に比べてより広範な権限を持っています。その代わり、受益者自身は権利行使が大きく制限されてしまいますので留意が必要です。

このように、両者は受託者を監督するという目的では一致していますが、権限や受益者に対する影響が大きく異なります。実務上、信託監督人は、弁護士や税理士などの専門職が、受益者代理人は親族が選任される傾向があるようです。

 

〇 監督人の役割

家族を信頼しているからこそ信託をするのであり、信頼している家族(受託者)に信託監督人をつけるということには違和感があるかもしれません。

しかし、受託者を引き受ける家族は一般の個人であり、通常、信託実務に長けているわけではありません。「監督」という言葉からは「監視」といったマイナスの印象を持たれるかもしれませんが、信託監督人には、不正な行為に対し監督権を行使するという場面に限らず、受託者が信託事務を問題なく行うことができるよう受託者との間で積極的にコミュニケーションを取り、信託事務全般について総合的な支援を行うことも期待されているといえます。

民事信託を利用する場合には、信託監督人等の活用も検討してみてください。

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

 

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