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お知らせ・コラム

受託者の役割

2021.06.01

コラム

受託者の役割

委託者から託された財産を管理する人を受託者といいます。
受託者は、動き出した信託のメインプレーヤーであり、財産管理処分に関する大きな権限を持ちます。しかし同時に、その権限が不当に利用されないよう、様々な義務も課されています。

受託者の資格

受託者となるために特段の資格は必要なく、成人している人であれば誰でも受託者となることができます。
また、個人だけでなく、法人も就任することが可能です。
ただし、弁護士・司法書士といった専門家は、信託業法の規制を受けることから、受託者となることはできないとされています。
民事信託では、信頼できる身近な人ということで委託者の子どもが受託者に就任するケースが多くみられます。
配偶者が受託者に就任するケースもありますが、その場合には、委託者とその配偶者が同年代となるため、判断能力の低下や、先に亡くなってしまう可能性を考慮しなければなりません。最初の受託者(配偶者)が亡くなった場合に備えて、次順位の受託者(子どもなど)を定めておくなどの工夫が必要です。

受託者の権限

信託を利用すると、委託者から受託者に財産の名義が変更されます。
委託者の財産を預かるだけにとどまらず、名義も変更されることから、受託者には財産管理処分に関する大きな権限が与えられているといえます。
受託者は、予め定められた信託目的の達成のために必要な範囲で、託された財産を管理処分する権限を持つことになります。具体的には、不動産の管理・売却、預貯金の入出金、信託された金銭を使った新たな財産の購入、新たな借入れなどを行います。

受託者の義務

受託者は、委託者の信頼に応え、その管理者としての任務を全うしなければなりません。そこで、受託者には様々な義務が課されています。

受益者の利益を優先しなければならない義務

民事信託は、財産を託す人(委託者)、託された財産を管理・処分する人(受託者)、信託から利益を得る人(受益者)の三者から成ります。受託者は、このうち、受益者の利益のために事務を行わなければならず、受益者の利益を犠牲にして受託者や関係者の利益を図ることは許されません。例えば、信託財産である不動産を売却する場合に、受託者が買主になることは利益相反に当たることになり禁止されています。

信託財産と個人の財産と分けて管理する義務

受託者は、委託者から託された財産を、自分の財産とは区別して管理しなければなりません。例えば、不動産であれば、それが信託財産であることを明記する登記をします。預貯金については、信託専用の口座を開設して、信託財産であることを明らかにすることが一般的です。

帳簿などの作成・報告・保存義務

受託者は、信託財産に関する事務の処理を帳簿などに記録し、年に1回、信託財産の状況を開示する資料を作成して受益者に報告しなければなりません。作成した書類には、一定期間の保存義務があります。

受託者に対する監督

民事信託が健全に機能し、委託者が望んだ信託目的に沿って財産が管理・承継されるためには、受託者が適切に権限行使をすること、裏を返せば受託者の権限濫用を防止することが重要です。
委託者や受益者は受託者に対する監督権限を有しています。
しかし、民事信託では、高齢者の認知症対策や障害を持つ子のための信託など、委託者や受益者が高齢者や障害者であることが多く、判断能力等の問題から、実効的な監督を期待できないことがあります。
そのような場合には、受託者を監督する権限を持っている信託監督人や、受益者の代わりに権限を行使する受益者代理人という制度を活用し、受託者を監督する仕組みを作っておくことも検討すべきです。信託監督人や受益者代理人は、信託契約で指定することができます。

 

毎月、親亡きあと、親の支援なきあとのコラムについて更新しています。
来月は障害年金に関するコラムを掲載予定です。

 

執筆者プロフィール 弁護士 杉山 苑子

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