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お知らせ・コラム

民事信託と成年後見・遺言(その1)

2021.02.01

コラム

民事信託と成年後見・遺言(その1)

前回(民事信託って何?)のコラムでは、民事信託は、家族による財産管理・財産承継のための制度であるとご紹介しました。

ところで、家族による財産管理・財産承継を実現する制度は民事信託に限られるものではありません。

本人に代わって家族や専門家(弁護士など)が財産管理を行う制度としては「成年後見」が、本人が亡くなった際の遺産の行き先を定めておく制度としては「遺言」があります。

そこで、民事信託と成年後見・遺言を比較しながら、両者の使い分けについて見ていくこととしましょう。

成年後見とは

成年後見は、判断能力が低下した本人に代わり、家庭裁判所が選任する成年後見人という立場の人が本人の財産を管理する制度です。

成年後見人という用語は、「成年者」の「後見」をする人という意味で、認知症高齢者や成人している知的・精神障がいの方などについて利用されています。

成年後見人は、例えば、障がいのある成人したお子様が自分で財産の管理をすることが難しい場合に、お子様に代わって、お子様の名義の預貯金通帳を預かり、施設への支払いを行ったり、障害福祉サービスの申請を行ったりして、お子様が安心して生活を送れるようサポートをします。

民事信託と成年後見の類似点

民事信託を利用する場合、財産を預ける人と財産を預かる人との間で信託契約という契約を結ぶことになります。

そのため、当事者には契約を締結できるだけの判断能力があることが必要です。民事信託が開始すると、例えば、障がいのあるお子様をもつ親御様が、親御様自身の財産を信頼できる親族(例えば姪Aさん)に託します。

そして、財産を預かったAさんは、親御様が亡くなったタイミングで、残った財産をお子様のために管理をすることになります。この場合、Aさんと、成年後見を利用した場合の成年後見人の立場は、いずれもお子様のために財産を管理しているという点で類似することになります。

民事信託と成年後見の相違点

他方で、両者には異なる点もあります。

誰が財産管理をするか

民事信託の場合、親御様は、誰に財産を管理してもらうかをご自身選ぶことができます。(上の例のAさん)

これに対し、成年後見は、誰に財産を管理させるかは家庭裁判所の判断で決められることになるため、Aさんが選ばれるとは限らず、特に、法的な課題がある場合や親族内でトラブルがあるような場合には弁護士などの専門家が選ばれる傾向にあります。

どのように財産を管理するか

成年後見人は、家庭裁判所から監督を受けることになります。

現在の家庭裁判所の実務では、本人の財産が減少しないよう財産管理を行うべきとの考え方が取られています。これは本人の財産を守るという意味でおいては大切なことですが、例えば、本人の将来の生活を豊かにするために、多少のリスクは伴うけれども預金に比べて運用益の見込める金融商品を新たに購入するといった積極的な資産活用は認められていません。

これに対し、民事信託の場合にはそのような制約はないため、財産を託す親御様において、預けた財産を運用して欲しいという希望を持たれる場合には、積極的な資産活用も可能です。

医療や介護サービスの利用が必要な場合

本人が生活するにあたり、医療や介護等のサービスを利用する必要が生じる場合があります。成年後見人が選任されている場合、成年後見人は本人に代わって障害福祉サービスの利用契約や施設入所契約を結ぶことが可能です。

これに対し、民事信託の場合、財産を管理している人(上の例のAさん)が、本人に代わってそのような契約を結ぶことは認められていません。実際には、ご家族等が代わりに手続きを行うことも多いのではないかと思われますが、施設側から明確な法的根拠を求められた場合には民事信託だけでは対応できないという点は注意が必要です。

 

毎月、親亡きあと、親の支援なきあとのコラムについて更新しています。
来月は障害年金に関するコラムを掲載予定です。

 

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

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